お役立ち経営情報 2012年1月

Section1 中小企業の資金調達を取り巻く環境変化

慢性不況を乗り越えるための 中小企業の資金調達の実務

1-1 サブプライムローン、リーマンショック後の概況

サブプライムローン問題、リーマンショックの余波で「百年に一度の大不況」という言葉が定着して久しくなりました。そして、その影響を最も受けているのが、中小企業であることはいうまでもありません。しかし、日本経済の根幹が危ういこの時期、金融機関の融資姿勢はITバブルが崩壊した2001年に比べ、改善しているという声も聞かれます。借り手保護のスタンスを打ち出す金融機関が増えている理由には、景気回復を喫緊の課題とする行政の方向性に加え、当時の苦い教訓があるのかもしれません。

つまり、突然の貸し渋り・貸し剥がしに遭った多くの企業が、資金繰りの目途が立たなくなり、倒産寸前に追い込まれたことを受け、政府・金融庁やマスコミから批判が巻き起こったことは記憶に新しいところ、取引先からクレームが出ることは、金融機関にとって大きな痛手であるわけです。

さらに行政の動きは、借り手尊重の方向に向いています。2009年12月、難航を極めた中小企業金融円滑化法が成立しました。2008年11月の「金融検査マニュアルの改訂」の延長線上に落ち着いたことで、実効性や限界が議論の焦点となっていますが、本質的には「融資の返済条件変更や借り換えへ努力を求める」とあるように、金融機関への努力を促すことが前提となっています。こう考えると、日本経済の根幹を支える中小企業の資金調達に関しては「時代背景をそのままに」というほど厳しいものではないのかもしれません。

1-2 厳格化する格付け評価・審査の基準

金融機関が融資判断をするとき、まず基準となるのが「金融検査マニュアル」に従った企業の格付け評価です。バブル崩壊以降の10年間で、その運営方法は様変わりしましたが、これは同マニュアルによって審査基準が変わったことによるものです。銀行はここに示された「債務者区分」や「信用格付」による厳格な「資産査定」を行うようになっています。

金融機関も営利企業ですから、貸出金利が十分に取れないところへ貸出を集中させることが難しいのは事実です。実際、金融機関自身、財務報告の健全性や透明性をアピールする目的で、格付けを厳しく行う流れは起こっています。

ということは、融資を獲得するためには、当然、債務者区分や格付けは一定以上のランクでなければなりません。債務者区分や信用格付のランクが低位だと、銀行融資を取り付けることはできず、格付けが企業の運命を左右すると言っても過言ではないのです。

格付け評価は、定量分析(財務分析)と定性分析の2つの過程を経て行われます。定量分析は直近の決算書から、経営の安全性・収益性・成長性・返済能力などを基準に、企業価値を判断します。定性分析は営業力や技術力など、企業の強みが主な判断材料となります。そのウエートは定性分析に傾きつつあることは覚えておいて損はないかもしれません。

審査に話を移しますと、その内容は企業審査と事業審査の2つに分かれます。企業審査とは、貸出対象企業の企業力を判断するもので、順調な収益状況が見込まれるか否かを判断するものです。裏を返すと、将来的に赤字が出るか否かが、予測のポイントとなります。

一方、事業審査とは、仕入、賞与、納税、設備など、事業に関するキャッシュフローを把握するものです。こちらは企業の資金使途や返済財源の説明で、キャッシュフローが明確でないと審査が降りません。というのも、金融機関にとって融資とは、将来の入金までの「つなぎ」という考え方に基づいているからです。現在、どの企業もキャッシュ不足ですが、その点は金融機関も織り込み済みです。そのため、資金繰り予定表や経営計画などを明確にすることで、信用を勝ち取ることが、これから事業審査対策といえるでしょう。

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1-3 税理士事務所との連携が資金調達を円滑に

融資を受けられるかどうかは、決算書の内容で決まるといっても過言ではありません。そして、ほとんどの中小企業の場合、その決算書を作成しているのが、税理士事務所です。決算書を作成するにあたっては、2つの考え方があります。

  • 税務署向け:「いかに税金を低く抑えるか」という節税を重視したもの
  • 金融機関向け:「いかに銀行に評価されるか」という業績を重視したもの

両者はまったく違う立場を取っています。前者は税金を低く抑えるため「利益を低くする」ことを、後者は銀行に評価されるために「利益を高くする」ことを目的としています。

そして、企業によって、資金調達のサイクルや融資額は異なりますから、一社一社に適した決算書を作成することが、税理士事務所の仕事であるといえます。さらにいうなら、税理士事務所には、業績や事業環境の変化を見極め、どちらを優先させるかを判断できるバランス感覚を求めたいところです。融資に必要なのは銀行の評価ですから、企業と銀行の関係に精通した後者に長けた人物が適材といえるかもしれません。

現在、税理士事務所業界では、中小企業会計指針の普及に力を注いでいます。これは減損会計・時価会計に準拠した決算報告を行う基準です。中小企業においては、決算書の作成に当たり、これにならうことが推奨されています。その理由は、この指針に基づいた決算書や財務報告を導入することが、金融機関の信用格付けを上げることにつながるからです。というのも、金融機関の審査は、「BIS規制」や「金融検査マニュアル」に準じており、その拠りどころは減損会計・時価会計の実態バランスシートに統一されています。そして、これによって企業実態を把握しているという背景があるのです。

また、この指針に基づいたチェックが入ることで、客観的で信頼が置けるものになることもポイントです。金融機関側からすると、格付け・審査の効率化が図れるばかりでなく、融資にあたって種々のリスクが軽減され、上場会社に準じるように積極的な融資が可能になります。企業の側も金融機関の印象が良くなることもメリットです。

1-4 これからの中小企業にとって事業計画書は必要不可欠

金融機関が融資を行うにあたって最も重要視するのが事業計画書です。事業計画書とは、企業がその事業をどのようにしていきたいのかについて、中長期的な視点で記したものです。資金調達そのものが目的である場合、少なくとも返済までの計画が必要になります。

事業計画書が重要視される背景には、金融機関の融資判断の仕組みが、稟議というシステムを取っていることにあります。そのため、中期目標や企業としての方向性が論理的かつ明確にされていることが、資金調達に直結する事業計画書といえるでしょう。

事業計画の役割は社内向けと社外向けの2つに分かれますが、資金調達にあたって重要なのは後者です。そして、金融機関が評価する必須項目は以下の4点にまとめられます。

  • 長期ビジョン(目的・目標)
  • 現状認識
  • 数値計画
  • アクションプラン(行動計画)
長期ビジョン

長期ビジョンは会社の経営理念と言い換えてもよいかもしれません。抽象的な文言で説明されるため、資金調達において、あまり意味がないと考えられがちですが、金融機関にとっては、その企業の"憲法"のようなものです。事業が岐路を迎えたとき、数値計画達成が危ういとき、どのような判断を下すのかを予測できる重要なファクターといえます。

現状認識

現状認識は計画書のなかでは、見落とされがちですが、大きなポイントとなります。自社が身を置く業界の経営環境や商品の流通状態、強み・弱み等を把握していないことには、計画に説得力を持たせることができません。また、金融機関は「過去から現在」を見たうえで将来を見極めます。このような理由から、現状を明確にする作業は必要不可欠です。

数値計画

数値計画は事業計画における中心となる要素です。企業としての具体的な戦略を数値化したものと定義することができます。策定する手順は、その戦略が具体的にどの指標に影響を与えるかを考えた上で、それぞれの数値に反映させていきます。数値計画は会社の具体的な戦略を財務数値化したものですから、詳細であるに越したことはありません。

アクションプラン

アクションプランとは、数値計画を実施する具体的な行動を示したものです。現状認識と計画数値のギャップをどう埋めていくかを明示し、具体的項目と実施されたことによる効果を記す必要があります。策定後はスキームを実行する仕組み・管理体制の構築が重要です。軌道修正が必要になった場合、いかに柔軟に対応できるかが重要で、進捗状況を金融機関に正しく報告することが、透明性ある企業をアピールすることにつながります。

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1-5 資金調達手法の種類

資金調達手法の種類は大きく分けて、以下の5つに分けることができます。

  • 公庫融資の活用
  • 制度融資の活用
  • 少人数私募債の実務
  • 銀行融資の活用
  • 助成金の申請

重要なのは資金使途、利益計画、資金繰りを考え、一番適切に対応できる融資手法は何であるか、そして、その手法を提供している金融機関はどこであるかを判断することです。本来、資金調達とは、事業を円滑に行うことを目的としています。ですから、目先の金利の安さや体面・世間体などを重視して融資先を決定することは得策とはいえません。まず資金使途との相性を考え、その上でスムーズな事業運営が可能となる資金調達法を選択すべきことを肝に銘じておきましょう。

1-6 アイ・パートナーズ グループの銀行格付けサービス

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次回は Section2 公庫融資を活用した資金調達 をお伝えします
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